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【写劇10】帆船「あこがれ」実習航海 みんなで動かした(産経新聞)

 「この船に乗ったら、『新しい自分を発見』がキーワード」。帆船「あこがれ」のタツ船長こと久下剛也さんは、甲板に並ぶ33人の参加者に語りかけた。

 大阪湾内を帆船でめぐる2泊3日の航海。今回の参加メンバーは、10歳から68歳。期待と不安の入り交じった表情で船長の話に耳を澄ました。

 大阪市が所有する全通平甲板型の帆船「あこがれ」は、3本のマストで全長52・16メートル、総トン数362トン。平成5年の竣工(しゅんこう)以来、「トレーニー」と名付けられた参加者を募り、日帰りから数カ月の航海実習(セイル・トレーニング)を行っている。今夏には上海万博への航海も計画されている。

 乗船式を終えると、大阪南港を出港。トレーニーは「ワッチ」と呼ばれる4つの班で活動し、航海中は互いをニックネームで呼びあう。

 期待に満ちた船出だったが洋上では悪天候に見舞われた。低気圧の影響で風が吹き荒れ船が大きく揺れる。タツ船長は安全を考慮して予定を変更、洋上停泊をあきらめて母港の岸壁に戻った。

 2日目は徐々に天気も回復。午後からは舞洲沖に向かった。船上では運動会が行われ、ヤシの実カーリングなど3種目に子供たちの歓声があがった。

 最初は緊張していたトレーニーも、2日目にはうち解け家族のような雰囲気に。全員が助け合いながらトレーニング・プログラムをこなす。

 青森から乗船したウッディ=加瀬幹さん=(25)は、あこがれの魅力を「みんなが協力して1つのものを動かすこと」と話す。

 例えば帆を張る作業。「ツー・シックス・ヒーブ」のかけ声とともに、力を合わせて綱を引く。皆の力が一つになり、白い帆が羽のように広がる光景は感動的だ。

 風が収まるとセイル・トレーニングの醍醐(だいご)味の一つ「マスト登り」が始まった。縄ばしごを使い、自力で高さ30メートルのマストに登る。初めはこわごわだが、次第にしっかりした足取りになり、笑顔で手を振るトレーニーも。

 マスト登りに挑戦したセツコ=平尾節子さん=(58)は、「やればできるんだな」とにっこり。

 下船が近づく3日目には待ちに待った青空が広がった。あこがれは、広げた帆に風を受けてゆったりと進む。船の先端にあるバウネットをハンモック代わりに、皆で白い帆を眺めた。

 「あこがれが、みんなの人生のマザーシップになれればと思います」は、下船式での船長の言葉だ。乗船中の体験を思いだして、どんなことも乗り越えてほしいというメッセージ。

 セイル・トレーニングは楽しいことばかりではない。藤井遼君(12)は「早起きが苦手で時間に厳しいところが嫌」。でも「帆を張ったときは感動した」。

 苦楽をともにした3日間の航海。タラップを降りるトレーニーの顔が、少したくましく見えた。(写真報道局 鳥越瑞絵)

                   ◇

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